全圧連の動き(令和4年度)

■建設分野におけるカーボンニュートラル、脱炭素社会実現に向けて

令和5年1月31日

清水建設株式会社 環境経営推進室 企画部長 兼
安全環境本部 環境部長 伊東 浩司

1.はじめに

国内外における昨今の2050年、カーボンニュートラルに向けた潮流が加速する中、企業が持続的成長を図るためには、気候変動問題への対応を「企業の社会的責任」としてだけでなく「成長の機会」として捉えるべく、当社では、2021年4月、環境経営推進室を新設し、同6月には新しいグループ環境ビジョンを策定・公表した。

当社グループが目指す持続可能な社会を「脱炭素社会」「資源循環社会」「自然共生社会」と定め、それらの実現に貢献すべく、2050年までに自社活動による負の影響をゼロにするだけでなく、お客様や社会にプラスの環境価値を積極的に提供していくこと(Beyond Zero)を目指すべき姿として掲げ、ビジョンの名称を「SHIMZ Beyond Zero 2050(ニーゼロゴーゼロ)」とした(図−1)。三つの目指すべき社会のうち、脱炭素社会実現に向けた現場での取り組みを中心に紹介する。

2.脱炭素社会に向けた現場での取り組み

2050年の脱炭素社会の実現に向け、発注者の意識、ニーズも変わり始めており、当社でも取り組みを開始している。脱炭素社会の実現と長期ビジョンや中期経営計画に掲げる売上や利益拡大との両立には、エネルギー生産性の向上、すなわち工事消化高当たりのエネルギー使用量の低減が不可欠である。

大規模土工事ではドローン測量による3Dモデルを、重機搭載のモニターで“見える化”、作業を効率化する等のICT活用に積極的に取り組むことで、エネルギー生産性向上のみならず、土工構造物の品質向上を実現している(写真−1)。
その上で、使うエネルギーは徐々に軽油から電力にシフトし、電力は再生可能エネルギー(以下、再エネ)電力への切り替え、軽油はバイオディーゼル燃料や天然ガス由来等の代替燃料への転換を拡大する必要がある。

グループ会社であり、再エネ電力の売買電事業を行うスマートエコエナジー㈱を通じて、グリーン電力証書やNon-Fit再エネ電力などを安定的に調達し、全国のモデル現場での工事電力の再エネ化を2020年度より開始した(図−2)。これまでに全国の工事現場でグリーン電力証書を活用、Non-Fit電力の受電を含めて2022年上期時点の現場仮設電力の再エネ化率は約12%に達した。営業活動時の環境提案コンペに盛り込み、採用に至る例も増えている。

現場ではバイオディーゼル燃料の採用を、少しずつ開始しているが、燃料や機種・車種によっては、車検の取り直し、メーカー補償対象外となる、軽油仕様に戻す際の多大なメンテナンスコスト、冬季には軽油以上に凍結リスクがあるなど、様々な課題をクリアする必要がある。中長期的には水素や合成燃料の採用を視野に入れている。

3.全圧連への期待

業界団体である一社)日本建設業協会共通の自主ルールとして、図-3の中央、破線で囲った四角の範囲内のみ、現場内の電力・燃料使用及び残土と廃棄物の処分場までの運搬を対象に元請責任としてCO2排出量を計測している。空の残土運搬ダンプ、コンテナ車、生コン車、資機材搬入車、現場作業員の通勤車、通いのユニック車などの道路走行、現場内においても舗装締固めのタンピングランマ—、全圧連加盟会社持ち込みの圧接・切断用アセチレンガスの燃焼も計測対象外となっている。

この元請責任範囲に法的根拠はない。複雑な下請構造、排出源たる重機・車両の所有権といった課題が多く、現在、省エネ法や温暖化対策法の届出制度において、建設現場・事務所は適用除外となっているが、昨今の世界情勢、国のカーボンニュートラル目標を鑑み、法改正の動向がある。

全圧連においては、第7次構造改善計画において、2030年に向けたカーボンニュートラルを掲げるなど、先進的な目標を掲げているが、加盟各社においても、CO2排出量の実績・削減目標管理を実施していただき、脱炭素社会の実現に向けて、共に取り組んでいただくことに期待したい。

図−1:SHIMZ Beyond Zero 2050 目指すべき持続可能な社会に向けた目標及びWEBサイトリンク
図−1:SHIMZ Beyond Zero 2050 目指すべき持続可能な社会に向けた目標
及びWEBサイトリンク
写真−1:ICT土工の実例 図−2:再エネ電力採用現場での仮囲い掲示
写真−1:ICT土工の実例 図−2:再エネ電力採用現場での仮囲い掲示
図−3:作業所CO2の計測範囲
図−3:作業所CO2の計測範囲
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特集 2050年脱炭素社会に向けて

■カーボンニュートラル社会実現に向けた建設業界の動向

令和5年1月31日

株式会社大林組 営業総本部・グリーンエネルギー本部
担任副本部長 武内 郁夫

1997年COP3での京都議定書の頃から話題となり始めた地球温暖化問題ですが、その後約20年はごく一部の政府・企業・団体の活動に留まっていた感がありました。しかし、2015年国連サミットでのSDGs採択、同年COP21パリ協定の頃から徐々に世の中に浸透し始め、その後の新型コロナウィルス蔓延で一気に世界共通の課題として認識されるようになりました。

エネルギー自給率がOECD加盟国中最低レベルである日本は、エネルギー問題と地球温暖化問題の両方を同時に進めなければならない非常に難しい立場ですが、2021年5月地球温暖化対策推進法改正可決による“2050年カーボンニュートラル”法制化で、建設業界周辺の動きも非常に活発になってきました。

1.カーボンニュートラル(CN)に纏わる社会情勢

(ア)GXリーグ

2022年2月に経産省が、「産官学金で一体となってGX(Green Transformation)に向けた経済社会システム全体の変革のための議論と新たな市場創造のための実践を行う場」として“GXリーグ”を設立しました。初期(2022年4月時点)の賛同企業が440社に上るなど(当社も賛同)、設立当初から大きな話題となり、来年度からの具体策段階的施行を目指して産官学金での積極的な活動が展開されています。

(イ)CNポート・エアポート

国交省主導の元、国内29港(2021年12月現在)がCNポートの目標を掲げ、各々独自の活動を続けています。また、国内21空港が重点調査空港として選定され、各々CNエアポートの計画を進めております。(当社も、これらの内4つに関与)これらの周辺にはCO2排出量の約6割以上を占める産業の多くが立地しているとともに、将来のグリーンエネルギー輸入がこれら港・空港を拠点に行われる事が予想されるためです。

(ウ)補助金

事業にCN的要素を組入れると、その費用は上振れしていく事が一般的です。事業主側の経営方針や営業努力でこれを打破できる場合もありますが、公的補助金活用により財政負担を軽減しているケースが多いです。特に環境省では、上述の経産省・国交省との連携も行いながら、様々な補助金制度を設立・運営する事で環境的な取組みを促進しています。

(エ)各種関連団体(日建連、不動産協会、等々)

これら政府の動きに加え、建設業界各種団体においても様々な動きが活発化しています。建築用資機材が含むCO2(エンボディーカーボン)、工事で使用する電気や燃料から発生するCO2、そして完成建物がその後何年にも亘って排出する運用CO2などを如何に試算・測定し、それを如何に管理し、そして評価するかという点において様々な議論が交わされており、何らかのルールや制度が近い将来構築されると思われます。

2.当社の取組み

(ア)省エネ

当社では東京都清瀬市にある技術研究所において省エネに関する研究開発を何十年にも亘り取組んできました。当該研究所の本館は2015年にソースZEB*を達成し、その後8年連続で同評価を達成しています。そこで培った要素技術を個々プロジェクトの条件に沿ってバランス良く組入れていきながら、ZEB化建築の実績を急速に拡大しています。

* 年間に生産するエネルギーと消費するエネルギーの収支をゼロにすることを指向した建物

(イ)再エネ・新エネ

当社は、再エネ発電プラントを設計施工という立場だけではなく、事業者としても多く手掛けてきており、その総発電規模は2023年には計35か所270MWを超える見込みです。また、将来の水素社会に向けたグリーン水素実証プロジェクトを国内外で複数展開しています。今後は、これらの開発で培った知見を活用し、PPA事業やグリーン水素インフラ事業にも展開していく予定です。

(ウ)施工時脱炭素

建設工事で使われる資機材(特に鉄骨・鉄筋・コンクリート)において低炭素型材料・工法を選定する努力を続けています。また、下図に示すように、建設工事に使用する電気や軽油等から発生するCO2削減や、工事事務所・休憩所から発生するCO2削減にも注力しています。

3.圧接業界への期待

圧接工事から発生するCO2量は、建設業全体から見た相対量としては大きくないと認識しています。しかし、冒頭に述べた昨今の世界的CNへの急速な動きに追従していくためにも、「事業主・元請の指示」という事ではなく、関係各社・各人において自分事と捉え、積極的に取組んでいく必要があるでしょう。

CO2排出量が約60%削減できるとされるアセチレンの天然ガス代替工法は最近では珍しくなくなってきました。同工法を益々活用して頂くことはもちろんですが、他産業では天然ガス使用そのものの見直しを迫られている事を考えると、そこで満足は出来ないと思われます。

コスト競争もより激しい時世ではありますし、技術的にも様々な課題がある事は承知していますが、次のような点を中心に更なる改善を期待しています。

  • ・低炭素資機材の活用
  • ・CNG/グリーン水素の活用
  • ・高効率工法の採用
  • ・資機材運搬車の電動化・燃料電池化
  • ・従業員/作業員へのESG教育
カーボンニュートラル社会実現に向けた取組み
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■アセチレンの昨今・未来

令和5年1月31日

高圧ガス工業株式会社 ガス事業本部
関東地区長代理 部長 中井 康夫

高圧ガス工業株式会社 ガス事業本部 関東地区長代理 部長 中井 康夫
高圧ガス工業株式会社
ガス事業本部
関東地区長代理
部長 中井 康夫

2022年暦年の国内のアセチレン販売量は、7500トンで推移。前年比で約1割減少しており、減少傾向が続いております。こうした市況の中で、国内にあるアセチレン工場では生産性の向上と効率化を図るため、統廃合が進み、現在27ヶ所となっております。(2012年度の国内アセチレン販売量は11600トン、アセチレン工場は40ヶ所)

当社も事業継続のための施策として、生産工場の統合を進めており、現在、自社5工場、JV工場6社、合計11工場となっております。

アセチレンの需要減少は今に始まったことでありません。エチレンやプロピレン、プロパン、LNGなどの代燃ガスが1980年代以降に台頭しました。さらに、主力の建設関連では工法がプレハブなどに移行し、金属・鉄鋼加工ではレーザー切断への移行や、また、圧接向けにおいても、コスト面や環境面から、代替ガスへの置き換えや機械式継手工法への転換が進んでいることもアセチレンの需要減少に影響しております。

その一方で、溶接溶断ガスではアセチレンの根強い需要があるのも事実です。それを支えているのは、アセチレンは、天然ガスや水素に比べ熱量(体積比)が高く、また、ガス量が少なく済むことや、酸素消費量も少なく済むという総合的なメリットもありますが、鋼材加工業種など、品質を重んじる分野では、炭素を取り出す反応性の良さや煤の発生防止にも役立つことからアセチレン志向を強め、アセチレンに再転嫁する動きもあります。

その期待がかかる分野として、金属加工業における真空浸炭炉やガス浸炭などの浸炭があります。浸炭とは、金属(特に低炭素鋼)の加工において、表面層の硬化を目的として炭素を添加する処理をいいます。現在はLPGや天然ガスから炭素を取り出しておりますが、アセチレンは反応性が高いため炭素を取り出しやすく、エネルギーの低減が図れることから、コストや品質の向上だけでなく、環境負荷低減効果も見込めます。

脱炭素社会の実現が求められる現在、この金属加工業の分野だけでなく、圧接業をはじめとしたその他分野やサプライチェーン全体でCO2排出量削減に向けた取り組みを進めていく必要があり、当社も事業活動を通じて貢献できるよう、取り組みを進めてまいります。

先述の通り、アセチレンは需要低迷という状況であり、新たなアセチレンのアプリケーションをいかに創出するかという点は、メーカーに問われている課題であります。当社では、アセチレンメーカーという優位性を活かし、現在、アセチレンを材料ガスとして作るカーボンナノチューブ(CNT)の開発を進めております。

CNTは炭素を原料に生成され、鋼の約20倍の強度を持ち、高い電流密度耐性や伝導性、耐熱性を有しております。半導体分野においては、帯電を防止するために樹脂にCNTを混練したものやセンサーなどの誤作動を防止する電磁波吸収材としての応用も期待されております。

当社が開発しているCNTは多層のもので、製造法はCVD法(化学蒸着法)を用い、高温かつ高真空の窯にシリコン基板を設置し、アセチレンを分解し発生する炭素を基板上で成長させて製造します。多層CNTは、紡績性(CNTを繊維状に引き出すこと)を付与させることで、導電性や熱伝導性を持たせたヤーン(多層CNTを紡いで糸状にした連続長繊維)やシートなどに加工できるなど、単層CNTにはない特徴があります。

当社では、CNTを紡績したシートやヤーン、また樹脂に導電性を付与したコンパウンド樹脂や溶媒にCNTを分散させた分散体などのラインナップを充実させ、拡販を目指しております。

溶接溶断用ガスとして多く使用されてきたアセチレンが、時代の変化とともに炭素を利用した様々な分野で活躍する時代へと移り変わりってきております。

当社も時代の変化に対応しながら、減少しているアセチレンガスの生産を新たな分野を開拓することで補い、最後の1社となってもアセチレン事業を継続させ、安定供給を行なうことで、総合鉄筋接手業を目指す圧接業の皆様に貢献してまいります。

高圧ガス工業 自社及びJV工場拠点
高圧ガス工業 自社及びJV工場拠点
高圧ガス工業
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■斉藤鉄夫国土交通大臣を表敬訪問しました

令和5年1月16日

齋藤鉄夫国土交通大臣を表敬訪問しました

令和5年1月16日、全圧連嘉藤会長はじめ役員一同、斉藤国土交通大臣を表敬訪問しました。斉藤国土交通大臣は全圧連の皆さんと久しぶりにお会いして、業界のおかれている状況についてお伺いしたいと、役員一人ひとりからお話を聞いていました。

役員の方からは、原材料値上げから始まり、若年者人材不足、処遇改善、社会保険未加入問題、カーボンニュートラル、業界の厳しい経営環境などについて実情を説明しました。

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■令和4年度優秀施工者国土交通大臣顕彰4名
青年優秀施工者土地・建設産業局長検証2名の方が受賞

令和4年10月18日

令和4年10月18日有楽町読売ホールにおいて、優秀な技術・技能を有し、後進の指導・育成等に多大な貢献をした建設技能者(建設マスター)487名、今後更なる活躍が期待される建設マスタージュニア106名が顕彰されました。

令和4年度優秀施工者国土交通大臣顕彰4名

携わったすべての方に感謝

松栄工業(株) 山口 智

今回の受賞は松栄工業株式会社の社長や仲間達のご支援及び全国圧接組合連合会のご協力と家族の支えにより頂けた賞であり感謝しています。

圧接業界に入り35年目になりますが、その中で様々な試練や挫折が有りました。その度に家族の支えがあり乗り越えることができました。また、松栄工業株式会社に平成23年7月に中途採用で入社し、社長や仲間達のご支援とご協力の中で各種資格取得をさせていただき様々な事を学び自分自身のプラスになる事ばかりでした。

近年、建設業における若年層の担い手不足問題や脱炭素カーボンニュートラルと課題はたくさんありますが、建設マスターとして他の模範となれるように若年者の育成及び、新技術の取得、ならびに技術指導をサポートし、お客様に喜ばれる高品質な継手の提供を目指します。

今後も家族に恩返しをしながら松栄工業株式会社に貢献できるよう力を注いで参ります。

未来の継手のために

(株)奥谷圧接 奥谷 次郎

この度、全国圧接業協同組合連合会、関東圧接業協同組合のご指導の下、「優秀施工者国土交通大臣顕彰」を受賞する事が出来ました。ご支援頂いた皆様に心より感謝申し上げます。

私がこの仕事を始めて22年近く経ちましたが、その間、手動ガス圧接・超音波探傷検査・鉄筋継手管理技士・基幹技能者・OJT指導員等、資格を取得させてもらいました。これらの知識や技術を活かし、これから資格を取得する若い世代へ、継手の未来のために指導、教育してきました。その結果、素晴らしい賞を頂くことができて大変光栄に思います。

今後は、建設マスターとして建設現場の繁栄と未来のために尽力させて頂きたいと思います。

継手を通して社会に貢献したい

(株)AIWA 野本 皇太郎

この度、建設マスターという名誉ある賞を受賞させていただき誠にありがとうございました。

この賞を受賞できたのも、お世話になってます関係者の皆様のご指導あっての受賞だと思っております。

圧接という仕事に従事し色々な苦労もありましたが、このような賞をいただき大変誇りに思います。我々の職種は、普通の人々からは中々見られない仕事であり、評価されづらい職種だと思います。しかし建物を支える重要な職種であるから決して品質の低い継手を提供しないよう努力する次第です。

社内における技術技能の低下を防止し、更により良い品質向上の為、創意工夫を凝らし改善を行っていく所存です。また若い人材育成を行い品質、安全、モラルを向上させ、社会に貢献する仕事を常に意識して従事するよう努力していきます。

今後も皆様のご指導を宜しくお願いいたします。ありがとうございました。

会社に感謝し、建設業に携わっていく

(株)広島ガス圧接 塩㟢 件造

この度はこの様な賞をいただきありがとうごさいました。

会社から、報告を受けた時は大変驚いたいた事を覚えております。早いもので、建設業にもう30年携わっております。この賞を頂いた事におごる事なく、自分を30年間も働かせて頂いた会社に感謝し、建設業に携わっていこうと思います。

より一層精進していきたい

(株)武蔵野 畠中 大地

この度は建設マスタージュニアの賞をいただき、ありがとうございました。

この受賞は私の努力だけではなく、会社の方々や家族等、周囲の方々のサポートがあってはじめて実現したのだと思っています。これからは建設マスターを目指し、自身の圧接技術の向上、後進への技術指導等、圧接のレベルアップを図れるよう、より一層の精進を重ねていきたいと思います。

今後も皆様のご指導ご鞭撻を頂きますよう、宜しくお願いいたします。ありがとうございました。

会社、同僚、思師に感謝

(株)垂野工業 垂野 風美

この度は、建設ジュニアマスターという名誉ある賞頂き本当に嬉しく思います。

この仕事を始めて20年間、地道に努力した結果が今回の受賞に:繁がったのではないかと思います。

支えてくれた会社、同僚、そして思師に感謝します。

私は約10年前にある人に出会いました。その人に出会い、圧接の考え方、取り組みが変わりました。次は自分がその人のような存在になれるように日々精進します。

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■国土交通省におけるカーボンニュートラルに向けた取組について

令和4年7月30日

国土交通省 総合政策局 環境政策課

1.はじめに

近年、気候変動により自然災害が激甚化、頻発化する中、2050年カーボンニュートラルが世界の潮流となり、我が国においても、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことが示されました。

国土交通省では、2050年のカーボンニュートラルの実現、気候変動への対応など、グリーン社会の実現に貢献するため、我が国のCO2排出量の約5割を占める運輸、家庭・業務部門の脱炭素化等に向けた地球温暖化対策、気候変動適応策等に戦略的に取り組む国土交通省の環境分野でのグリーン技術を含めた施策・プロジェクトを「国土交通グリーンチャレンジ」として昨年7月にとりまとめました。

2.グリーン社会実現に向けた横断的視点

グリーン社会の実現に向け、多様な主体間の連携の下、特に以下の6つの横断的視点をベースに、国土交通分野における環境関連施策・プロジェクトの充実強化を図ることとしています。

① イノベーション等に関する産学官の連携
・グリーン成長戦略による新技術の研究開発等にコミットする民間事業者等との連携
・サプライチェーン、ライフサイクル全体での異業種間連携を含む分野横断の取組推進
② 地域との連携
・地域脱炭素ロードマップと連携した省エネ、再エネ活用等の取組推進
・まちづくり、地域交通等に関する計画間・関係主体間の連携強化
③ 国民・企業の行動変容の促進
・国民・生活者・利用者等の目線で環境行動が適切に選択される環境整備
・国民・企業の価値変容・行動変容の促進に向け、経済的なインセンティブの活用を含めた社会システムのあり方について検討
④ デジタル技術、データの活用
・分野横断的なデータ連携やオープンなデータプラットフォームの構築など、デジタル化による効率的・効果的なグリーン化
⑤ グリーンファイナンスの活用
・革新的イノベーションに向けた民間投資の呼び込み、ESG投資の促進
・脱炭素化へのトランジション戦略の構築
⑥ 国際貢献、国際展開
・国際的なルールメーキング等の国際貢献
・脱炭素化、気候変動適応に関する新たなインフラシステムの海外展開

3.分野横断・官民連携により取り組む重点プロジェクト

以下では、国土交通省として取り組む6つの重点プロジェクトの要点を紹介します。

(1)省エネ・再エネ拡大等につながるスマートで強靱なくらしとまちづくり

エネルギー消費ベースで我が国のCO2総排出量の約3割を占める民生部門等における省エネ、再エネ利用等を推進するため、住宅・建築物の更なる省エネ対策の強化、インフラ等を活用した地域再エネの導入・利用拡大、カーボンニュートラルなまちづくり等を推進します。

【主な施策】
  • ○LCCM住宅・建築物、ZEH・ZEB等の普及促進、省エネ改修促進、省エネ性能等の認定・表示制度等の充実・普及、更なる規制等の対策強化
  • ○木造建築物の普及拡大
  • ○インフラにおける太陽光、下水道バイオマス等の地域再エネの導入・利用拡大
  • ○都市のコンパクト化、スマートシティ、都市内エリア単位の包括的な脱炭素化の推進 等

(2)グリーンインフラを活用した自然共生地域づくり

自然環境が有する多様な機能を活用した「グリーンインフラ」の社会実装により、CO2吸収源対策のほか、生態系の保全、雨水貯留・浸透等の防災・減災、ポストコロナの健康でゆとりある生活空間の形成に資するまちづくりなど、多面的な地域課題の複合的解決を図る、持続可能で魅力ある地域づくりを分野横断・官民連携により推進します。

【主な施策】
  • ○流域治水と連携したグリーンインフラによる雨水貯留・浸透の推進
  • ○都市緑化の推進、生態系ネットワークの保全・再生・活用 等

(3)自動車の電動化に対応した交通・物流・インフラシステムの構築

運輸部門におけるCO2排出量の86%を占める自動車からの排出量削減に向け、自動車の電動化を加速するため、関係省庁と連携し、次世代自動車の普及促進に向けた支援策を強化するとともに、自動車の電動化に対応した交通・物流・インフラシステムの観点からの対策の強化を図ります。

【主な施策】
  • ○次世代自動車の普及促進、燃費性能の向上
  • ○自動車の電動化に対応したインフラの社会実装に向けたEV充電器の公道設置社会実験、走行中給電システム技術の研究開発支援 等

(4)デジタルとグリーンによる持続可能な交通・物流サービスの展開

我が国のCO2排出量の約2割を占める運輸部門における排出削減に向け、自動車の電動化対策だけでなく、AI・IoT、ビッグデータ等のデジタル技術の活用を含めたスマート交通やグリーン物流の取組を推進し、効率化・生産性向上と環境配慮の両立を図ります。

【主な施策】
  • ○LRT・BRT等の導入促進、MaaSの社会実装等を通じた公共交通の利便性向上
  • ○物流DXの推進、共同輸配送システムの構築、モーダルシフトの推進
  • ○船舶・鉄道・航空分野における次世代グリーン輸送機関の普及 等

(5)港湾・海事分野におけるカーボンニュートラルの実現、グリーン化の推進

脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化等を通じて「カーボンニュートラルポート(CNP)」の形成を推進するとともに、ガス燃料船等の開発・実用化の推進、生産基盤の確立等により、世界に先駆けてゼロエミッション船の商業運航を実現します。

【主な施策】
  • ○水素・燃料アンモニア等の輸入・活用拡大を図るCNP形成の推進
  • ○ゼロエミッション船の研究開発・導入促進、日本主導の国際基準の整備 等

(6)インフラのライフサイクル全体でのカーボンニュートラル、循環型社会の実現

一旦整備されると長期間にわたって供用されるインフラ分野において、供用・管理段階でのインフラサービスにおける省エネ化のみならず、ライフサイクル全体の観点から、計画・設計、建設施工、更新・解体等の段階において、脱炭素化の取組を推進します。

【主な施策】
  • ○省CO2に資する材料等の活用促進、技術開発
  • ○建設施工分野におけるICT施工の推進、革新的建設機械の導入拡大
  • ○道路(道路照明のLED化)、鉄道(省エネ設備)、空港(施設等の省CO2化) 等

4.おわりに

グリーン社会の実現の鍵は、「連携」です。「国土交通グリーンチャレンジ」の実施に当たっては、政府一体となって取り組むグリーン成長戦略や地域脱炭素ロードマップ等と軌を一にし、経済産業省や環境省等の関係省庁との連携により、最大限の効果を発揮できるよう取り組む必要があります。

地方公共団体や地域の各種団体、そして、国土交通分野に関わる多種多様な民間事業者や公的機関等との連携により、また、国民・企業等による主体的な取組とも相まって、国土交通省に期待される大きな役割と責任を果たせるよう、カーボンニュートラルや気候危機に対応した社会システムの変革に挑戦し、持続可能で強靱なグリーン社会を将来世代に引き継いでいけるよう取り組んでまいります。

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■カーボンオフセットにより環境負荷低減を図る

令和4年7月30日
全国圧接業協同組合連合会 会長 嘉藤 裕一
エコウェル協会
会長 勅使川原 正臣

2015年に国連総会で17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されました。これを受けて、我が国では菅前内閣総理大臣が所信表明演説で「2050年には温室効果ガス排出量をゼロにする」と宣言されました。建設業界においても環境負荷の低い資材や、完成後温室効果ガスを排出させない建物の設計、また設計段階から環境に配慮した工法の積極的採用といった流れは今後加速していく事が予測されます。

そのような流れの中、高分子天然ガス圧接「エコスピード®工法」(※1)で使用されるエコウェルガス(※2)はCNL(※3)を採用することが決定し、2022年4月より一部地域を先行して供給を開始しました。

CNLとは、天然ガスの採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスを、新興国等における環境保全プロジェクトにより創出されたCO2クレジットで相殺すること(カーボン・オフセット)により、地球規模では、この天然ガスを使用してもCO2が発生しないとみなされる液化天然ガスです。シェル社が行う環境保全プロジェクト(※4)は、地球規模での温室効果ガス削減・排出抑制に加え、現地での雇用の創出や生物多様性の保護等、SDGsの目標にも関連しています。CNLの活用は、持続可能な社会の実現に貢献します。

エコスピード®工法は天然ガスの使用に加え、高分子還元材(PSリング)を用いて鉄筋接合面の酸化物の発生を防止する新たな技術により、接合不良を低減したガス圧接工法です。これまでも、アセチレン+酸素の混合炎を使用した従来圧接と比較してCO2の排出量を約60%削減、且つ現場での燃焼時に排出されるCO2を約25%削減しておりました。CNLの導入によりエコスピード®工法での施工によるCO2排出量はおおよそゼロとなることで、更に環境性の付加価値を高め建設現場における脱炭素化に大きく貢献できるものとなります。エコスピード®工法は在来工法と比べ安全性・品質の安定性で優位性があり日本全国で安心して施工することができ、さらにCNLによる効果も加えて脱炭素社会の実現に大きく貢献します。

  • (※1)(公社)日本鉄筋継手協会では、本工法を「高分子天然ガス圧接継手」と命名している。
  • (※2)ガス圧接専用に成分調整された天然ガス。
  • (※3)カーボンニュートラル液化天然ガスのこと。
  • (※4)ペルーの森林保全、インドネシアの泥炭湿地の自然保護、中国の植林活動。
    なお、これらの環境保全によるCO2クレジットとセットになった天然ガスをシリンダー充填している。
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■7次構造改善計画
 2030年に向けてカーボンニュートラルを展開

令和4年7月30日

全国圧接業協同組合連合会 専務理事 中村 真也

「信頼できる技術集団をめざして」を第7次構造改善計画のメインテーマに、サブテーマとして「総合鉄筋継手業の行く先」を掲げ、全圧連の5年後のあるべき姿を目指して活動を展開しています。この構造改善計画は昭和59年に第1次構造改善計画が始まり、令和2年から第7次が始まり37年が経過しています。

第7次構造改善計画は、令和2年から令和7年までが活動期間となります。第7次では経営戦略化ビジョンとして、「総合鉄筋継手業としての体制づくり」、「働き方改革=若年者、外国人材の確保・育成」、「技能者の育成」の3つのビジョンを掲げ、事業を展開しています。

令和4年から脱炭素社会の実現を目指す取組みを展開していくためにカーボンニュートラル事業を追加しました。

1.総合鉄筋継手業の体制づくり

令和元年7月、全国圧接業協同組合連合会(以下、全圧連)はガス圧接業から鉄筋継手業へ定款を変更し、総合鉄筋継手業への転換の第1歩を踏み出しました。現在、鉄筋継手業への定款変更は関東圧接業協同組合、西日本圧接業協同組合と2つの組合が定款を変更しています。

今後、継手の多様性にあわせて、定款変更して溶接継手、機械式継手に取り組んでいかなければなりません。総合鉄筋継手業を推進していくうえで重要なのは、全ての継手に公平な検査を確保することに業界をあげて取り組んでいくことです。公平な検査は総合鉄筋継手業の要です。70年余続いた圧接技術を次世代の技量者に継承していくためにも『総合鉄筋継手業』は重要なキーワードとなります。

2.人材不足の解消(外国人材の育成)

令和2年8月から外国人受入れのため鉄筋継手の特定技能評価試験を実施しています。これにより技能実習から鉄筋継手への移行が年々増加しています。今後、全圧連として外国人技量者の育成に注力していきます。

圧接業界の年齢ピーク(47歳)から10年後、この状況では技量者は6割近くに減少すると考えます。この傾向は建設業界に留まらす、全ての業種に当てはまります。

しかし、慢性的な人手不足の背景には人口減少だけでなく賃金の問題も内在しており、業界が一丸となって処遇改善に取り組んでいかなければなりません。

3.カ—ボンニュートラルのアクションプログラム

令和2年10月26日、第203回臨時国会の所信表明演説で、菅総理大臣(当時)は「2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。

これにより2030年までの二酸化炭素排出量削減目標を2013年度比46%減とするカーボンオフセットを掲げております。

カーボンニュートラル推進するには、業界の全体で展開するアクションプログラムがキーポイントとなります。カーボンオフセットを綿密に組み立てることで、温室効果ガス削減にどこまで迫れるか、そのベースとなるカーボンオフセットが重要となります。

(1)カーボンオフセットの構築

圧接業界のカーボンオフセットを推進するために①機器、②燃料、③運搬の3つの面から削減要因を抽出し具体的に検証していくことが必要です。

全国圧接業協同組合連合会 会長 嘉藤 裕一

(2)削減の方向性

①削減要因:機器機材

圧接機器のカーボンオフセットは、メーカーのカーボンオフセットによるところが大きく、メーカーの取組みと企業努力で大きく左右します。ユーザー側としてはCO2削減の製品を購入するか、交換するか、会社で使用している機器を変更することで、取り組みを拡大していきます。

②削減要因:燃料

燃料から出る CO2 の占める割合が大きい。よって、代替エネルギ―への転換が圧接業界のターニングポイントになります。加熱して接合する圧接技術は CO2 の排出量を完全にゼロにすることは不可能です。しかし、日本全体から見ると業界が排出する CO2 は多くはありません。業界が出す CO2 がカーボンニュートラルに大きな影響が与えることがないことを証明することも必要です。

③削減要因:運搬

車の燃料に関する代替エネルギーをCNGもしくは水素、電気自動車の変更することで削減効果が大きいことから、今後、バイオマス燃料など再生可能エネルギーへ実用化に向けて大きくシフトしていくことが考えられます。車の買い替え等、助成金を活用して転換していくことで、状況は大きく変化していきます。

4.カーボンニュートラルの展開

カーボンニュートラルを圧接業界が単独で推進していくことは不可能です。第7次構造改善計画に盛り込込んだことで、燃料、機材メーカーの協力を得て、5年、10年の長いスパンで活動を展開して、2030年の二酸化炭素排出量削減目標である2013年度比46%減とするカーボンオフセットを達成しなくてはなりません。

今後の展開として、カーボンオフセットを進めると同時に、温室効果ガスについて、排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにすることです。しかし、現実的に排出量を完全にゼロに抑えることが難しい。

その方法として排出せざるを得なかった分については、同じ量を「吸収」または「除去」することで、差し引きゼロにします。そこで、削減が難しい排出分を埋め合わせるために、「吸収」や「除去」をおこないます。

たとえば、植林を進めることにより、光合成に使われる大気中の CO2 の吸収量を増やす、大気中に存在する二酸化炭素を回収して貯留する「ネガティブエミッション技術」を活用することも考えられます。

2030年までに残された時間は限られています。迫りくるエネルギー問題について立ち向かえるへ道標を示すことが業界の責務であると考えます。

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■新会長挨拶
 情報発信を迅速に行い スピーディーな体質を作っていく

令和4年7月30日
全国圧接業協同組合連合会 会長 嘉藤 裕一
全国圧接業協同組合連合会
会長 嘉藤 裕一

今期より全国圧接業協同組合連合会の会長を務めさせていただく嘉藤でございます。

大場前会長が 12 年に亘り築き上げてきた組合活動を継続しつつ、私なりの考えを盛り込んだ新たな組合活動により、より強固な全国圧接業協同組合連合会を築いていく所存であります。

私の考える圧接とは、構造物を人間の体に例えますと、骨を鉄筋、筋肉をコンクリート、皮膚を外壁、そして関節部を圧接だと例えさせていただくことが多くあります。構造物の根幹をなす重要な仕事である誇りを持ち、組合に所属している会社、ひいては第一線で活躍されている従業員の方々すべてが、笑顔で暮らせるクリーンな業界づくりに尽力していきたいと考えております。その為に私のできることは何だろうと考えてみますと、人材確保、若手育成、働き方改革を進めていく事。人材確保については、各単協での出前講座の拡充。若手育成については、富士教育センターの活用による若年労働者に対する資格取得教育の充実。働き方改革については、完全週休二日制導入モデルの策定などを考えております。各方面の方々と連携を図り建設業界全体のスタンダードとしていきたいものです。

しかしながら、問題は山積みです。建設業界全体の高齢化は加速していく一方です。その中で、建設業界の魅力をどのようにアピールしていくのか。入職した若者が何に魅力を感じるのか、しっかりとしたリサーチの元、将来のスキルモデルを今どきの形で作成するのも良いかもしれません。完全週休二日制については、各社の負担が大きくならないよう、業界団体を挙げて単価の引き上げを行い、賃金を減らすことなく完全週休二日制の導入を支援して行きたいと思います。

人の問題以外にも、我々を取り巻く環境は日々変化を続け、新しい法律への対応が求められる場面が多々あります。目の前にはインボイス制度への対応が控えております。こうした社会的環境及び法律への対応を組合員の方々に迅速に対応していただく為に、情報発信を迅速に行いスピーディーな組合の体質を作っていく事も大切な責務ではないかと考えております。

脱炭素社会形成のための、カーボンニュートラルへの取り組みについても、省エネやエネルギー効率の向上に対応した技術である天然ガス圧接の拡大の為、エコウェル協会とも連携していかなければ達成できません。植林活動への貢献、ネガティブエミッション技術を建設業界にどのようにして用いていくかも考えていきたい。

世界ではESG投資が拡大している為、環境への配慮は企業にとっても取り組むべき重要課題ではないのでしょうか。カーボンニュートラルを目指す技術のイノベーション開発に大規模な投資が行われているようです。まずは2030年までに持続可能な開発目標であるSDGsもあります。世界の動きもクリーンな社会づくりへと向かっているので、建設業界全体も安全、安心、(safe and secure)な業界を目指し組合員一丸となり努力していきましょう。

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